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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)389号 判決 1963年2月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人田沼義男の上告理由第一点について。

所論原判示事実をこれに対応する原判決挙示の証拠により認定した原審の判断は、是認し得られる。これに所論の違法を見出し得ない。

論旨は、結局、原審の裁量に委ねられた証拠の判断、事実の認定を非難するに帰着するものであつて、これを採り得ない。

同第二点について。

論旨中、本件不動産売買の媒介に対する原審認定の報酬金は、右売買代金四五〇万円或は売主申出の代金額より減額せられた五〇万円の何れを基準としたものであるか、不明であるとの前提に立つて、原判決を違法であるとする主張がある。しかしながら、原審は、本件不動産売買の代金額が四五〇万円であつた旨を適法に認定し、この金額を基準として右売買の媒介に対する原判示報酬金を算定して居ること、原判文上、明白である。したがつて、右主張は、前提において既に失当である。

また、論旨中、右不動産売買の代金は、四六五万円であり、売主申出の代金より減額せられた金額は、三五万円であつたとの前提に立つて、原判示報酬金額を不当とする主張がある。しかしながら、本件不動産売買の代金が売主申出の額より三五万円を減額した結果、四六五万円となつたものであるとのことは、原審の認定しない所であるから、右主張は、前提において既に上告適法の理由とならない。

その余の論旨について審究するに、原審は、被上告人が宅地建物取引業法に基づき登録した宅地建物取引業を営む商人であり、当初、売主である訴外柳寅泓より、その後、上告人より依頼せられて本件不動産売買の媒介者となり、右売買の代金額を、売主申出の金額より五〇万円を減額した四五〇万円に妥結するに至らしめ、右売買の成立を見た事実を認定判断して居ること、原判文上、明白である。されば、被上告人は、商法五一二条の規定により、買主である上告人に対し報酬金を請求し得ること、当然である。而して、原審は原判示の諸事情より、その報酬金額を五万円と算定して居り、この認定判断は相当である。原審の如上判断及びこれに至る過程に、所論の違法はない。論旨は、畢竟、原審の裁量に委ねられた事実の認定を攻撃し或は独自の見解に立つて原判決を非難するに帰着するものであつて、これを採り得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)

《当事者》

宇都宮市日野町四四番地 上告人 福田直次郎

右訴訟代理人弁護士 田沼義男

同市四条町一四〇四番地 被上告人 鈴木哲雄

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